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引き渡し式で岡山県危機管理課の和田章課長(右)から備蓄品の目録を受け取るムラカミの村上雅俊社長=2025年1月27日午前10時34分、高梁市落合町阿部、上山崎雅泰撮影
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 能登半島地震を受け、岡山県が昨年、県内で大規模災害時に孤立する可能性がある集落を10年ぶりに調査したところ、計753カ所あることがわかった。早島、里庄の両町を除く25市町村に及ぶ。能登半島地震では主要幹線道路が寸断され、多くの集落が孤立。支援物資の輸送にも影響が出た。県は支援体制の強化に向けて取り組みを進める。

 県によると、調査は市町村を通じて昨年4~9月に実施した。その結果、753カ所が道路寸断などで孤立する可能性があると判明した。同様の調査を2014年にした際には502カ所で、当時と比べ251カ所増えた。

 増加の原因について、県は「市町村がアクセス道路と土砂災害警戒区域について改めて精査をした結果」としている。

県北の中山間地域に多い傾向

 自治体別では、新見市が最も多く132カ所、次いで真庭市110カ所、津山市58カ所などと続き、県北の中山間地域が比較的多い傾向にある。

 こうした地域では、インターネットや電話など通信設備が被災した場合、連絡を取れなくなることも想定される。集落外との連絡が途絶えれば、住民の安否確認にも支障が生じる。

 このため、県は県の消防防災ヘリコプターに衛星携帯電話を積載し、隊員が孤立集落に降りて住民に渡すことで、その後の通信手段を確保する対策を取る方針だ。

 県は25年度の一般会計当初予算の予算要求で、孤立する可能性がある集落のために、発電機や蓄電池、簡易トイレなどを備蓄する市町村への支援に1300万円を盛り込んだ。

 衛星携帯電話の整備に170万円を要求。衛星インターネットを導入し被災地で情報収集能力を向上させる事業に130万円を要求。いずれも13日に公表された2025年度一般会計当初予算案に盛り込まれた。

 県危機管理課の担当者は「市町村の取り組みを支援するとともに、県が備蓄する資機材を災害時に活用できるようにしたい」と話している。

住民拠点SS 10カ所にアルファ化米や飲料水など備蓄品

 県は、道路寸断などで災害時に支援物資を被災地に届けるのが困難になった場合に備え、災害による停電時も自家発電設備で給油ができるガソリンスタンド「住民拠点サービスステーション(SS)」に災害用備蓄品を配備することを1月から始めた。

 1月27日、高梁市落合町阿部の「サンラック高梁SS」で、県から備蓄品の引き渡しがあった。

 備蓄品は、アルファ化米100食、500ミリリットルのペットボトル飲料水96本、携帯トイレ100回分。施設は2018年の西日本豪雨で浸水したことがあるため、ピットルームの一角、高さ約2.5メートルの場所に保管される。

 高梁SSは自家発電設備を備えた、県内に約300カ所ある住民拠点SSの一つ。災害などの停電時でも可能な限り継続して住民向けに給油を行うとされる。

 県と県石油商業組合は06年、災害時の被災者支援に関する協定を締結。その取り組みの一環として、県は今年1月から高梁SSをはじめ県内10カ所の住民拠点SSに備蓄品を配備した。今後も保管してもらうガソリンスタンドを増やしていく考えだ。

 この日の引き渡し式で、県危機管理課の和田章課長は「住民に身近なガソリンスタンド。迅速に支援物資を届けてもらえれば」と述べた。

 高梁SSを経営する「ムラカミ」の村上雅俊社長は「災害発生時に有効に活用し、被害を少しでも減らせるようにしたい。チラシを貼って備蓄品があることを利用者に知らせたい」と述べた。

【岡山県内の市町村別の孤立可能性集落数と、調査対象集落数に対する割合】

市町村 孤立集落数 集落数 割合

岡山市 40     185   21.6%

倉敷市 5     26   19.2%

津山市 58     186    31.2%

玉野市 18     47     38.3%

笠岡市 11 15 73.3%

井原市 29 144 20.1%

総社市 3 11 27.3%

高梁市 51 278 18.3%

新見市 132 325 40.6%

備前市 19 73 26.0%

瀬戸内市 17 59 28.8%

赤磐市 48 89 53.9%

真庭市 110 401 27.4%

美作市 51 231 22.1%

浅口市 18 18 100%

和気町 11 44 25.0%

早島町 0 0 0%

里庄町 0 0 0%

矢掛町 25 25 100%

新庄村 2 12 16.7%

鏡野町 13 94 13.8%

勝央町 4 4 100%

奈義町 3 28 10.7%

西粟倉村 12 12 100%

久米南町 15 48 31.3%

美咲町 27 104 26.0%

吉備中央町 31 109 28.4%

全県計 753 2568 29.3%

※岡山県まとめ。調査対象は、農林水産省の農林業センサス、漁業センサスで「中山間地域」「沿岸地域」「島嶼(とうしょ)部」にある農業集落、漁業集落

【災害用備蓄品がある住民拠点サービスステーション(SS)】

●住民拠点SS名

 会社名

 住所

●福渡

 内外モータース

 岡山市北区建部町福渡

●シーサイド

 小林石油店

 備前市日生町寒河

●ミナギ

 ナンバ石油

 総社市美袋

●北木島

 浅野石油

 笠岡市北木島町

●矢掛

 河上石油

 矢掛町矢掛

●矢掛

 広瀬商店

 矢掛町矢掛

●サンラック高梁

 ムラカミ

 高梁市落合町阿部

●哲多

 光タクシー

 新見市哲多町本郷

●出光上斎原

 作州かがみの森林組合

 鏡野町上斎原

●日本原

 森藤石油店

 奈義町滝本

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